実装試作(1)
市販のプラモデル(バンダイ BB戦士シリーズ)に組み込んだ状態で詳細な諸問題を詰めてみたい。
試料として、BB戦士No.267/烈火武者頑駄無を用いて、主な外観に関わる部品を骨格に固定している。Fig 3.1~3.3をご参照願いたい。
概念試作でも触れた構造を、外装を施した状態で確認する。
頭部と胸部について。
頭部の前後屈に伴い、頚骨と外装の干渉が見られる。
実装試作では、頭部側および胸部側の外装を切り欠いて対処しているが、
デザイン上での調整を要する。(Fig 3.4、Fig 3.5)
頚部は、頭部の前後屈及び回転時のクリアランスを確保する為、長めに調整しているが、
真正面から見た場合(Fig 3.1)やや浮き気味に見える。
デザイン上で印象を補正できないか検討する余地がある。
頭部の垂直方向の回転(頷く、上を向く)際の頭部と胸部の干渉に関しては、デザイン的に根本的な解決は難しい。頚骨を伸縮させることによって可動範囲を確保している例が見受けられるが、今回の構造には、これを回避する為の胸部の前後回転軸が用意されている。
胸部全体の角度を変える事によって、頭部との干渉を低減させると共に、
上半身全体が下半身に対し大きく屈曲しているように見せる効果を見込んでいる。
脚部とその周辺について。
脚部には、元々外観的な意匠が設定されていない場合が多いが、今回素材として使用した
『烈火武者頑駄無』には、下半身から脛にかけての形状設定画稿が存在している。
しかし、今回の構造概念と相反する形状であったため、足首関節より下のみを用い、大腿部から脛に掛けては特に反映させていない。
また、足指部に関しては、実験的に左足部にのみ追加している。
Fig 3.9をご確認いただきたい。元のデザインに違和感を与えないよう考慮しつつ、外装に分割部を設けている。
Fig 3.8、3.9に示すとおり、前脚、後脚は、直立状態から屈曲状態への移行に際して、交差や接触する部位が多く、単純に骨格に沿った外観意匠では対応できず、これに対応した外観構造を考案する必要がある。
また、今回は取り付けていないが、胴体から大腿部前面に垂れ下がった装甲については、
その懸架方式を一考する必要がある。
多くのデザインに含まれる意匠であるが、これは本質的に上半身と脚部のクリアランスに干渉し、双方の前屈方向の可動を大きく妨げる。
この構造概念に限った問題ではないが、関節可動範囲の増大に伴って、避けては通れない問題である。
また、腹部に関しては、全身を深く屈曲させた場合、今回のように何も無い、逃がしの空間として空けてある方が正しいように思えるが、デザインとの整合を取れるかどうか、今後検討の余地を残す。
本来の構造考察からは横道となるが、入り組んだ構造を持つ前脚、後脚を人間の手で動かすのがかなり億劫である。
可動フィギュアとしての扱いやすさを考慮するならば、外装に取手のような構造を取り入れる事を検討せねばならない。
以上の問題に関して、順次考察を絡めながら、次回以降、デザイン変更部位の外装に関して造形試作を行いたい。