珍客、去る
かぶと虫、客死。
色々と負傷してるせいでやたら転ぶので無駄に体力を消耗していた所に、
先日の暑さが堪えたのか、とうとう動かなくなってしまった。
生前から、じっとしていると死んでるんだか寝てるんだか判断に困る、と思っていたが、
実際死ぬと足を不自然に折り畳んで固まってしまうのだと分かった。
結局、野に放つ事はできず。
わりと体調を快復してきているにも関わらず、動き方が変なのが直らないので、
「あんまり見たく無いなぁ。」
と思いつつも摘み上げて、間近で観察した所、
当家に来る以前の段階で相当の深手を負っていることが判明。
足の動きが明らかに変。羽は開くけど飛べないらしい。
そしてこれが致命的。触角が片方失われている。
だからこいつ、物に登ろうとすると頻繁にひっくり返る。そして起きるのが絶望的に下手。
そして、これは私の不注意でもあるので悪い事をしてしまったが、
その状態であちこち歩き回ると、爪が何かに引っかかっても、
上手く外す事ができずに、最悪、爪がもげてしまうらしい。
夜中にカーテンに登ろうとして絡まり、どうやら一度ならず落下してへし折れた足先が
周囲に落ちている、という状態で、朝に発見。
その段階でなお、足に引っかかった糸を強引に引っ張り続けていたので、
デザインナイフとピンセットでどうにか解いて救出。
いつも放っておいても、朝には皿の上か植木鉢の中にもぐりこんでいるか、
たまに台所まで歩いてきて、そこで力尽きている程度なので、
特に囲いを設けなかったのがこんな形で災いするとは、うかつだった。
歩くのも難儀な状態になってしまったので、
もう家から出すのは断念。
菓子箱の中に一通りの生活圏を設けてやり、
「もう自活しろとは言わんから、飽きるまで生きるといい。」
と、見届ける事に決定。
そして、およそ半月、というわけで。
平均寿命どおりなら、あと半月は生きただろうし、コンディション的にも
天寿を全うとはとても言えないだろうが、
果たして、飽きる程度には生きたのだろうか。
この類の生き物はそもそも思考をしないし、動きもメカメカしいので、
そういう懊悩があったとは思えないが、
やはり手元で生き物を死なせてしまうのは切ない。
庭の一隅に埋めて葬る。他に特に弔いはしない。
盆にここに戻ってこられても困るし。